18年前の自分に伝えてあげたい。
「毎日絵を描いて、
印刷した歌詞カードや雑誌の切り抜きを
ノートにスクラップするほど大好きな彼らが
今あなたの目の前で歌ってるよ」と言ったら
当時のわたしはどんな顔をするだろう。
昨日BUMP OF CHICKENのライブに行ってきた。
ツアー初日、埼玉メットライフドーム。
おきまりの1人参戦。
わたしが当たった席はアリーナ席の
ちょうど真ん中のCブロック。
「まあCブロックなら悪くはないけど、ドーム広いし
姿は見えづらいだろうなあ。わたし目も悪いし。
目の前に背の高い男の人が来ないことを祈ろう…」
くらいに考えていた。
そして当日、会場に着いて席の案内表を見て、
わたしは自分の目を疑った。
メインステージからまっすぐ伸びる
花道の先端を囲む場所、
ちょうどそこがわたしの席のある
Cブロックだったのだ。
そこで一気に心拍数が上がる。
だけどわたしの列番は2桁台。
10列以上の人たちが前にいるということになる。
それでも十分すぎるほどにありがたい場所だ~と
ルンルンで席に向かう。
そこで私はまた度肝を抜かれることになる。
まさかの、最前列。
それもはんぱじゃなく近い。
柵を隔ててすぐ向こう側に
3つのマイクスタンドがある。
え?
ということは目の前にメンバーが来る?
そしてそこで歌い、演奏する?
想像してわたしは軽いパニックに陥る。
隣の席に来た女の子2人は
「え!?ここ!?席番間違えてないよね!?」
と慌てふためいていた。
逆どなりで1人で来ていた男性は
静かに席とチケットを確認し、
着席した後嬉しそうな顔をしていたのを
わたしは横目で逃さなかった。
わたしはこの女の子たちと男性に
声をかけたい衝動を抑えるのに必死だった。
とにかくこの喜びを誰かと共有したくてたまらなかった。
結局声をかける勇気はなく、とりあえず落ち着くために
ほころぶ顔をぐっと抑え、溢れ出る喜びのツイートをした。
正直ライブが始まる前のことは
あんまり覚えていない。
とにかく最前列ということが信じられなくて
ふわふわと浮き足立った気持ちだった。
会場がふっと暗くなり、
ステージの大きな液晶いっぱいに映像が流れ出し
ライブが始まった。
未だかつてないくらい、釘付けだった。
彼らがステージに立っている間
わたしの身体の全神経は
目と耳にぎゅーっと集中していたと思う。
目の前で歌い、演奏する彼らを見つめながら
色々なことを思い出した。
BUMPを好きになったのは今から18年前。
10歳の時、深夜番組で天体観測が流れているのを見た時だ。
そして初めて彼らの演奏を生で観たのは
必ず受験に合格するという親との条件付きで、
1人で新幹線に乗って静岡から広島まで行った
SET STOCK'05だった。
あの時が人生初のライブ参戦
(しかも初がフェスという…)だったので、
ごった返す人に困惑しながらも
「BUMPを近くで見たい!」という一心で
その前に出演するアーティストが終わるたびに1列前へ、
また1列前へと着実に進んでいった。
最前列まであと7~8列というところで
BUMPの出番が来た。
1曲めは、当時2日前に発売したばかりの
プラネタリウム。
ライブ初披露だった。
わたしはその時の感動を今でも鮮明に覚えている。
ずっと会いたかった人間が目の前に現れた時、
涙がダバダバ溢れてくるんだってことを初めて知った。
視界がぼやけて、胸が苦しかった。
しっかり彼らの姿を目に焼き付けないといけないのに
とめどなく涙が出てきてしまってどうしようもなかった。
あの時、汗まみれで人にもみくちゃにされながら
目の前にいる背の高いガタイの良い男性が掲げた拳の隙間を狙って
一生懸命背伸びして見たBUMP OF CHICKEN。
その彼らが、いま、時を超えて
柵をこえたすぐ向こう側で
あの時と同じプラネタリウムを歌っている。
ギターを弾く指さばき、
液晶に映っていない表情も、
歌声とともに動く喉仏も、
Tシャツのシワまでしっかりと見える。
視界を遮るものは一つもない。
目の前で彼らが
想い出がいっぱい詰まった歌を歌ってくれている。
これまで何回も彼らのライブに足を運んで来たけど
最前列にいる人たちのことがいつも羨ましかった。
最前列で見るBUMPとは一体どんなものなんだろう。
どんな景色なんだろう。
前世にどれだけの徳を積めば
最前列で見られる日がくるんだろうとも考えたことがある。
それがついに叶ったのだ。
すごく嬉しかった。
こんな感想しか出てこない自分が憎いけど、
とにかく本当に本当に嬉しかった。
言葉の通り夢のような時間だった。
演出もすごかったし、
初めてライブで披露される曲を聴くのにも忙しいし、
何より目の前にいる彼らを
脳みそが情報処理するのに大変だった。
完全に情報過多でオーバーヒートしていたと思う。
ベイビーアイラブユーだぜ、で話題になった
「新世界」なんて、楽しすぎて頭が完全にぶっ飛んでた。
ライブの余韻を噛み締めながら家に帰って、
小学6年生の時にわたしが大事に大事にしたためては
毎日ニヤニヤ眺めていた秘蔵の
BUMP OF CHICKENノートを久しぶりに開いた。
本邦初公開、わたしの闇歴史の一つである
BUMP OF CHICKENノート。
表紙の汚さが年季の入りっぷりを物語っている。
そしてその汚さに負けないくらい
目をみはるのがノリの寒さである。
顔から火を噴きそうになるほど
恥ずかしいこのオタクノリ。
「見たら殺ります。」のフレーズの中二病感。
この表紙もさることながら
中身の痛々しさもやばい。
もうやけくそになって中身を公開する。
絵、文字、レイアウト、書いてある内容全てにおいて
センスが微塵も感じられなくて目も当てられない。
時が経ちすぎてインクがすっかり消え去り
CDのタイトルに引いてあった波線だけが
悲しく残るレシート。
右隅に小さく載ってるBUMPのクレジットに
線を引いてある劇場版ワンピースの新聞広告の切り抜き。
歌詞の書き写しコーナーや突然語り出すBUMPとの出会いエピソード。
ダサすぎる春夏秋冬のメンバーイラスト。
当時公式サイトで公開されていたメンバーの
交換日記全ページやマネージャーさんの日記。
バイオグラフィーとディスコグラフィー。
誰も読まないのに架空の読者に
「お楽しみに」と言って締める後記と銘打たれた最後のページ。
このノートに貼ってあるほぼすべての画像は
友達の家で高画質印刷していて
プリンターのインクの減りがやけに早いからバレてしまい
友達の親御さんにこっぴどく叱られた思い出もある。
(所々黒線で隠してあるのは
中二病オタクフレーズ大憤死で見せるに堪えない部分)
このほかにも、いっちょまえに曲についての考察や
学校のことで悩んだ時に机にうつ伏せになりながら聴いた
ロストマンにとても救われたってことが書かれた日記。
学校が終わって真冬の寒い中
スノースマイルを買いにCDショップまで
自転車を駆け巡らせた時の日記も書いてあった。
このノートを作っている当時、
インターネットで自分のホームページを作るのが
大流行していた。
わたしが「ガラスノブルース」という
BUMP OF CHICKENのイラストサイトを
運営していたのもこの頃だった。
その当時のことについてはこの記事に詳しく書いてある。
そんな青春時代を経て、大人になった今。
しかもこんなにでっかくなったBUMPを
最前列で拝める日がやってくるなんて
この時は思ってもみなかった。
とても感慨深かった。
初日なのに、最終日みたいな藤くんのMCにも
胸が熱くなってしまった。
「アルバムがこないだ出ました。
アルバムが出たことが4人にとってめちゃくちゃ嬉しくて。
最初は1人から始まって、ずっとスタジオにこもって、
そんで4人で頭寄せてあーでもないこーでもないってやって
ようやく一つの音源になってそれがみんなの元に届いた。
一番古いのとか3年以上前だし、
最近作った曲もあるけどようやくそれをまとめて
みんなに聴いてもらえた。
作ってる時から、早く聴いてもらいたいなぁって思ってる自分と
あー早く聴いてもらいたがってんなこの曲たちっていう
曲の声みたいなものがずっと聞こえてて。
もう苦しいくらいその想いが聞こえてきて
それをようやくみんなに届けることができた。
そして今日こうやってライブで初めてやる曲とかもいっぱいあって
それをみんなは聴いてくれた。
こんなに嬉しいことはなかった。
俺の曲、俺たちの曲がようやく今日完成した、と
心から思いました。本当にどうもありがとう。
あのね、みんなは多分、
俺が曲を聴いてくれてありがとうって、
どんだけの気持ちでそれを言ってるか
三年半の間に作った曲を聴いてもらって
そのリアクションを見たことに対して
どういう気持ちでいるのか、皆は多分全然わかってない(笑)
だけど、それでいい。
俺ずっと歌うから、聴いてください。
聴かない日があったっていい。
でも10年後20年後でも、生活の、君の歴史の中の時々で
ほんの少しだけ時間を俺の曲、俺たちの曲に分けてあげてください。
よろしくお願いします。
今日はありがとう。
初日なのにファイナルみたいな気持ちだったよ。
嬉しくてさ。また会おうね。
帰り道は気をつけて、いろいろやって、
拭いたり脱いだり着たりとかして、
風呂入って寝ろ!じゃあね。おやすみ。
ありがとう。バイバイ。」
藤くんが大きいステージで1人
このMCを言って、ライブが終わった。
涙が出た。
ちょっと前の山里亮太さんの結婚会見で、
しずちゃんが
「真面目に生きてたらいいことあるんやなあ」って
言ってたことをぽやっと思い出した。
また、真面目に一生懸命生きようと思った。
最高の夜だった。
ありがとう。